朝焼けに檸檬

アラサー。創作をしています。不定期更新です

あおと月

寝つきの悪い夜見た月は、満月でもないのに丸く見えた。 月が好きだ。 「月が追いかけてくる」 小学生、もしかしたら中学生くらいまで幻想を抱いていた。 20年以上過ごした故郷は、昔と比べすっかり明るくなって、でもそれでも東京の空と比べれば格段に星が…

全部、嘘。

静謐の中に異物が混入する。整えた自我がかき乱されるように。 まだ朝日の昇らない時間帯に聞こえるバイク音。規則的な寝息。鼻腔をくすぐるのは蜂蜜のように甘い香り。 打刻音が平静を彩りつつ、日常へと回帰させる。他に何の音もしない静かな時間。僕の僕…

文学フリマ東京に出店します

webカタログ更新しました! イベント初参加のため、オール新刊です。是非遊びに来てください。 5/6(月)開催【第二十八回文学フリマ東京】に出店します! (入場無料!)出店名: あおづくしブース: ケ-09イベント詳細: (link: https://bunfree.net/event/tokyo28/…

聞こえますか

#文字書き版深夜の真剣文字書き60分一本勝負 お題 雨と海 雲が重なり、白、灰、黒。青が狭められ、まだ音はそんなにしないから、今なら傘を差さずに帰れそう。だけど、熱心に本を読んでいる君が雨に気づくには、本降りにならないと駄目そうだ。何度も読み込…

月を煮る。

なおしほし。尚志視点 年に何回もあるスーパームーンに、僕はときめく。見ろよ、綺麗だろ、大きいだろ。そうやって語りかけてくるみたいだから。 「そろそろ寝なさい」 形式通り22時半に消される部屋の明かり。いい子の返事をしてからしばらくして、僕はベッ…

tip tap tap

顔を洗い、タオルで水気を拭き取る自分の顔と、目があった。クマがひどく、くたびれた顔だ。少し寝るのが遅くなっただけで、随分調子が悪くなる。30歳という年齢を嫌でも意識するし、30歳以降も坂道を下るようにやってくるのだ、という誰かに言われた言葉を…

取扱説明書

初めまして。閲覧感謝します。 僕のことについて書くことにします。 好きな食べ物は魚と鳥です。 どちらかというと、生っぽい食感を好みます。刺身最高。 それと、甘いもの。いちごや桃の入っているデザートは、特に好きです。 好きなものは、本。あと海。青…

あおとしたいこと

僕はお話を考えるのが好きです。空想ばかりして生きていたいのが本音。お散歩や旅行と読書。あとは、お互いに、一緒に過ごしたいと思える人と居られればそれでいっぱいです。 僕は色んなことに関して決めるのが苦手ですが、決められたことに文句は言いません…

あおとクリスマス

クリスマスの思い出は、家族でケンタッキーとケーキ。振り返れば典型的で幸せな家族生活を送っていたのだと思う。 残念ながら僕はケンタッキーが好きではなくて、いつまでも口に残るパサパサしたお肉はいらないから皮だけ食べてごちそうさまします、あとはケ…

あおと「僕」たち

僕の中の「僕」は、いつか振られた男だったり、街中で見かけた「僕」と言いそうな男だったり、何かのドラマや漫画で見たようなありきたりな「僕」だったりします。 そしてそれらは部分的に僕と似通っていて、憎めません。 それぞれの世界があり、「僕」はい…

あおと歌

歌は好きだ。つい口ずさんでしまうものもある。ただ、あんまり興味のないまま過ごしてきたのと、好きな歌手が歌手らしくないと鼻で笑われたことが大昔にあって、余計に音楽に対して積極的に接してこなかった。だから、好きな歌手ではないがいくつか覚えてい…

あおとお掃除

時々一念発起して部分掃除し始めます。トイレや炊事場やその他諸々。汚いよりは綺麗なほうが好きなので、あまり苦ではありません。ただ面倒くさい精神をたくましく育てていますので、定期的にとはなかなかいきませんが。 掃除の何が1番いいって、何かを捨て…

あおとアイドル

僕にとってのアイドルはカワイイをきちんとこなしている子で、それは何もテレビの中だけでなく、隣のクラスのナントカちゃんとその隣のクラスのナントカちゃんと、みたいに単純に僕がカワイイと思えばアイドルだった。テレビの中ももちろん大好きな人たちは…

『よだかの星』考

宮沢賢治 『よだかの星』について独断につき批判はご遠慮願います。 善人に対して世は冷淡というわけではない。たとえばよだかのように、自身の自己肯定感が低く、容姿も侮りやすく、自分よりも格下と決めつけやすい「弱者」であれば、人は簡単に差別する。 …

雨降りには紫陽花を添えて

学校帰り、何でもない会話をしながら、6月11日17時5分というこの時間を忘れないでおこうと思った。片付けとか面倒なことは嫌がってしない私が、写真の共有サイトや地域の噂話コミュニティや、本当か嘘かわからないものまで頼って調べて、やっと場所を決めた…

なおしほし

お題箱から。 貝殻を集めるのが好きな男の子と星を集めたいと言う男の子のちょっと不思議な話 貝から音がすると言う。波の音じゃなくて、砂のこぼれる音でもない。僕の聞き間違いでも、おぼえ間違いでもなければ確かにこう言った。 「星の音がするんだ」 星…

僕という人

ジェンダーのツイートやアンケートをきっかけに、改めて僕について考えていた。ツイートに収まる気がしなくて、でも書いておきたかったから、書いていく。 結論だけ言うと、わからない。まだ僕を探してる。 僕という人間をそれなりにこねくり回してやってき…

『我が生活』、『散歩生活』考

中原中也『我が生活』『散歩生活』について。私論。 どこへ行くにも切手の綴りをたくさん持って、筆まめ、お昼から夜中までよく歩く。それが中原中也という人である。 『我が生活』の頃、彼は恋人と別れる。「私はほんとに馬鹿だつたかもしれない」から始ま…

『魔術考』

芥川龍之介『魔術』感想 ネタバレ含む 欲とは手強いもので、人は一生のうちに欲から離れることなどないのだと思う。 したいこともしたくないこともすべて欲であり、感情を無意識に無にしない限り、なくなることはない。 結局人間という者は実に欲にまみれた…

或る女

これが最後だからと渡された茶封筒には、皺だらけの一万円札が入っていた。額はいつも通りながら、本当にこれが最後と念を押されたことに顔をしかめ、礼もそこそこに立ち去りながら、女は金の使い道を考えて歩く。馴染みの居酒屋で溶かすもひとつ、上等の鞄…

君と僕とのかくれんぼ。

三日月でなくてもクロワッサンというパンを食べ、朝が始まる。大枚をはたいて買ったコーヒーメーカーは、今日も機嫌よく動いていた。天気はくもり。占いは6位。ラッキーカラーは紫。遠い、遠すぎて親近感のわかないグルメ情報を聞きながら、男は予定を思い返…

60通目の真実

本日こうして書面を差し上げたのは他に理由がないことを、明晰な貴方ならお分かりでしょう。そうです。私のことについてに決まっております。貴方が必要以上に詮索なさるものですから、つい余計なことまで口走ってしまいそうになるのを、必死に抑えて耐え忍…

熱帯魚

「コノコハモウダメネ」 ガラス越しに歪んだ、無機質な口の動き。気まぐれに変えられる水と、同じように飼い主の気分で供給されるエサと、人工の空気とで生かされている。こうも他人に人生を委ねる他ない生物になるとは、思いもよらなかった。信仰深くなかっ…

その笑顔が見たい

息をつく間もなく、次の仕事に取りかかる。古くさいハンコ至上主義にのっとった書類の束は減ることなく、気分と反比例に、山は登りがいのありそうな高さへと日々記録を更新している。この調子で進めると、残業時間の更新も行えそうだ。 そう言いながらも、好…

豆乳生活

やめてみた。たくさんのことをやめてみた。 まず、服にこだわることをやめてみた。毎日似たような無地のものを繰り返し着ている。古くなればまた似たようなのを買えばいい。考えなくていいから便利になった。 次に、体に悪そうなものを食べるのをやめたみた…

路地裏の木漏れ日

「それ、絶対伝わってないよ。いいの」 絶対のぜがずぇに聞こえるくらい目一杯引き伸ばされて、それがおかしく笑ってしまう。僕のことを思っているという彼女の身勝手な慈善によって、僕は話せば話すほど悲劇の役者になっていく。 もし僕が泣いて喚いていた…

水中花籠

水泡が消えた。それですべてだった。 涼しげな目元をしていた。音もなく笑う人だった。昼飯は欠かさず汁物を買う人で、箸をつけるのは汁物からという自己の流儀があった。箸が必要以上に汚れないための食べ方らしかった。背筋をピンと伸ばして食べる姿も、歩…

僕のメリさん

午前7時21分、いつもの電車に乗り込めば、物憂げな表情のあの人と出会う。片手にはカバーのかけられた文庫本。 世界中のどこを探しても彼女ほど文庫本の似合う人はいないと思う。彼女の、その少し日に焼けた健康的な肌には、クラフト紙のカバーがよく馴染ん…

りんご姫

気がつくと首を絞めていた。真っ赤な頰に、長い睫毛をした君の。 「最近楽しいことがないの」 そうだね、と同調した僕は、君と繁華街に繰り出した。きらめくネオンサインを登り、扉を開けた。 君は一本調子で、ほとんど感情らしい感情を確認できなかった。僕…

今 このひとときが 遠い夢のように

僕のおもちゃ。 賢くないけど従順で、束縛は嫌がるけど束縛したがる。 座りすぎてスプリングのきかないソファに遠慮がちに転がっている。 初心を気取って俯いた顔から表情は読み取れないが、どうせ大したことを考えてはいまい。雛のような甲高い声は偽りで、…