創作再開しました。不定期更新です

読書記録

『よだかの星』考

宮沢賢治 『よだかの星』について独断につき批判はご遠慮願います。 善人に対して世は冷淡というわけではない。たとえばよだかのように、自身の自己肯定感が低く、容姿も侮りやすく、自分よりも格下と決めつけやすい「弱者」であれば、人は簡単に差別する。 …

『魔術考』

芥川龍之介『魔術』感想 ネタバレ含む 欲とは手強いもので、人は一生のうちに欲から離れることなどないのだと思う。 したいこともしたくないこともすべて欲であり、感情を無意識に無にしない限り、なくなることはない。 結局人間という者は実に欲にまみれた…

『駈込み訴え』考

太宰治『駈込み訴え』感想 ネタバレ有り ユダは裏切った。 これはキリスト史を語るに外せぬ周知の事実である。 ではなぜ裏切ったのか。 太宰は辻褄の合う推論を創りあげた。『駈込み訴え!』では、彼は最初、「ずたずたに切りさいなんで、殺して下さい。」と…

『河童』考

芥川龍之介 『河童』感想ネタバレ含むので注意 河童は、人間より繊細で賢く出来ている。これは、芥川が神経をすり減らす中で、自身と河童を重ねてみていたのではないだろうか。人間的感覚にいたはずの主人公は、河童の世界に迷い込んだことで河童と密接にな…

『二銭銅貨』考

江戸川乱歩『二銭銅貨』感想。 ネタバレ含む。 まず、当時の暮らしや情景を想像させる描写がいい。泥棒が紳士だという設定、また紙を隠すなら紙、といった口上も腑に落ちやすい。人を不快にさせない泥棒が出てくる話は当時大衆小説と親しまれたことにも頷け…