追憶の雨の中

アラサー。創作をしています。不定期更新です

化身

誰でもいいわけじゃないのに、誰でもいいような、そんな言い方をしてみる。
相手は怒る。
もしくは、同意し、お互いを偽ったまま、関係が進む。
夏場の、しばらく放置されたアイスコーヒーのような、生ぬるさ。
あるいは、風呂から上がって、少しのぼせ、ぼうっとしすぎたときの、けだるさ。
好きだよ、とも言わない。
愛してるなんて、口が裂けても出てこない。
一緒にいて楽しいなんて台詞すら、嘘臭くて言えない。
僕はそんな生ぬるさと気だるさと、少しの幸福の中で生きている。
抱きしめたときのむなしさ。
ためらいがちに伸ばされた、腕。
いつかなくなることだけが頭を巡り、なくなったところで何が変わる、と意地悪な心がほくそ笑む。
「誰か、本気で好きな人できた?」
お互いが、そうであってほしくないくせに、義務のように聞く。
「まぁ、まだ君でいいかな」
曖昧に笑う僕らは、醜く、美しい。
僕らでないと築けない、不思議な関係。
泥臭くて、見るに耐えないのに、ここから抜け出せない。
靄がかかったように、はっきりしないものに、すがりついている。
はっきりしないものをありがたがっている。
依存して、ある意味信仰してやまない。
これも、あれだろうか。
俗に言う、俗的な現象。
化身。