創作再開しました。不定期更新です

巻き戻した夏

楽しかったねと振り返ることができたなら、あの夏は終わらなかっただろうか。
いつものように、ごめんねで仲直りできなかった。
ずれだした後はあっけなく過ぎ、
「いらないの、捨てといて」
自分でも驚くくらい事務的な声が出た。
期間は、短くなかった。
思い出もあるし、楽しかった。
未来は切り開けなかった。
変わろうとしなかったし、歩み寄る気もなかった。
久々に見た顔は無表情で、そんな表情もあったんだと思わせた。
そう思うと、しばらく君の顔を見ていなくて、いつから、君の表情を気にしなくなったのか、わからなくなった。
好きだったはずの顔が、まっすぐ見つめられなくなった。
君のいいところはなんだっけ。
当たり前だったものが、消えていく。
喜ばせようと模索していた、あの頃。
泣かれたとき、周りに聞いて回った対策。
終わらせなくないと必死だった。
一緒にいるだけで他に何もいらなかったのに、人は贅沢を覚える。
不満も増えていく。
当たり前は楽しくない。
刺激がほしい。
でも、刺激がほしくないときは放っておいてほしい。
我がままになる。
譲り合わないと。
話し合わないと。
ないと。が増える度に、気持ちが離れていった。
謝罪が癖になった。
喧嘩が増えた。
よりを戻すための、小旅行。
思い出の地をめぐっても、二人はちっとも感傷的にならなかった。
そのとき、確信した。聞こえないようにつぶやく。さよなら、君。そして、
巻き戻した夏。