創作再開しました。不定期更新です

squall

たとえば、誰か大切な人が死んで、僕は泣き崩れる。
周りは僕に同情し、慰める。
死を悼み、思い出しては泣く。
数年もすれば、時折思い出す程度になり、年月がたてば、誰か他の大切な人を見つけるかもしれない。
たとえば、誰か大切な人が死んで、僕は憔悴するほど死を悼む。
現実を直視できず、ふとある日、その死んだはずの誰かを感じる。
まだいるのだ。
まだいて、感じる。
笑い合うこともあるし、泣きたい日には共に泣く。
一緒にいた頃と何ら変わりなく、他の人にも僕の目にも、実体がないだけ。
当然大切な人がいるのだから、僕は他の誰も愛さない。
たとえば、大切な人が死んで、僕は泣く。
いや、泣かないかもしれない。
あぁ、いないんだ、という虚無感が僕を包む。
じわじわと哀しみが僕を纏い、それでも、泣くに泣けない。
周りからは非難轟々。
周りの非難から逃げるように、僕は殻に閉じこもる。
それは、共に過ごした振り返りかもしれないし、新天地の開拓かもしれない。
ほとぼりも冷めた頃、僕は急に泣きたくなる。
大切な人がいた場所、感覚、全てが僕に降り注ぐ。
周りはもう、忘れてしまっている頃かもしれない。
それでも僕は、大切な誰かを今日も思い出す。そして、悼む。
たとえば、大切な誰かが死んで、思い詰め、僕はその人と同じ所へ旅立とうとする。
手段はたくさんある。
今すぐ会いに行くよ、待っていてねと。
その人のいない世界など僕には考えられないから。
だから僕は、間違っていない。
そう思って。
悼む正しさはどこにあるのか。
正しさなどないかもしれない。
僕は、君を失ったらどうするだろう。
君にそう問いかけてみた。
分かんないよ。そのときの君が決めれば。
どうしたって、いいんだよ。
その答えを聞いて、僕は君といて、君を選んで、君も僕を選んでくれて良かったと思うのだった。
雨が降る。
涙のように激しい雨。
Squall