朝焼けに檸檬

アラサー。創作をしています。不定期更新です

僕は咄嗟に嘘をついた

リクネタ。
乃木坂46「僕は咄嗟に嘘をついた」の歌詞から創作。


「好きだ!ぼ、僕と付き合ってください」

当時流行っていた少年漫画の真似をして、それは、校庭の鉄棒で行われた。
告白の相手が知っていたかどうかわからない。
僕はとにかく、告白がしたかった。
そして彼女が欲しかった。
それだけだったから、細かく覚えてない。

交換日記をしたり、おそろいのものを持ったり、帰りに一緒に歩いたり、休みの日、近くの公園に行ったり、ファストフード店で長話したり、デートらしいデートを、僕たちはした。

けんかをすることもあったが、だいたいはうまく過ごしていたと思う。
夏休みが終わり2学期に入って、君がやってきた。
隣の席に座った君と目があったとき、きれいだと思った。
みんな同じ黒い瞳なのに、君のは吸い込まれそうで、深く印象に残るまなざしだったのだ。

転校生がきれいだからと言って、浮気するわけではなく、相変わらず僕は彼女と仲良く過ごしていた。
でも、彼女と付き合いながら、僕は君のことばかり見ていたのかもしれない。
はっきりと君が好きだと思ったのは、君に声をかけられたあの日だった。

「本当は彼女のこと、好きじゃないんでしょう」

全て分かっている、という風な断定的な口調だった。
間をあけず僕の口は、

「いや、好きだよ」

そう言ったような気がする。
付き合っている彼女のためを思って言ったのかもしれない。
いや、そのときは本当にそう思っていたのかもしれない。
正確に、なんと答えていたかは記憶にない。

おそらくだが、そうだとは言っていないはずだ。
言っていたら、君の言う「好きじゃない」を肯定することになってしまう。
答えたことはしっかりと覚えていないのに、答えたときの君の目が美しく、みとれてしまったことだけは、覚えている。
それで僕が君を好きになったことも。
今も覚えているくらいだから、相当心に残ることだったんだろう。

その後彼女とは、自然に別れてしまったけれど、僕と君とが付き合うことはなかった。
君のその後を詳しくは知らない。
この間同窓会で集まったとき、噂で君は僕を好きだったんだと聞いた。
君が今どこにいるのかも、どうしているのかも、聞かなかった。
僕らは二度と交わることがない。
それで良かったんだ。