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追憶の雨の中

アラサー。創作をしています。不定期更新です

流れ星

1次創作

テレビをつけた。
特に意味はない。
いや、理由ならあった。
当たり前が当たり前ではなくなったから。
物が消え、少しずつ気配も消えていったから。
いた頃、しょっちゅう話していたわけでもない。
それでも、存在の大きさを実感せざるを得ない。
それくらい、音が必要だった。
消せば、静寂が、空間を包む。
僕だけがいた。
黒い画面に、僕の姿が写る。
声はない。
生活音というのだろうか。
今まで気にもしなかった音が聞こえる。
そういえば、あれは君と見に行ったんだった。
これは、君が持って帰ってきたもの。
二人で出掛けた記憶は、あまりなかった。
一人でいると、そんな記憶がよみがえる。
たいしたことをしてあげなかった。
歯磨き粉がなくなり、いつも、いつのまにか増えていたことに気づいた。
歯ブラシもそう。
トイレットペーパーも、ティッシュペーパーも。
言ってくれたらよかったのに。
言わなきゃ伝わらないじゃないか。
これ、買っといたよ。
そんなこと、言わなくても他に話すことだらけだったんだろうけど。
いや、僕らって、そんな饒舌じゃなかったよね。
最初の頃は、無言が怖くて質問攻め。
下らないことまで聞いて、しかも、何度も同じことで、よく君があきれてた。
だんだんと流れができてきて、話もしなくなって、居心地はよかった。
定番ができてきて、外出もありきたり。
考えなくていいことが、楽だった。
君だってきっとそうだと思ってた。
言わないことが心地よく、言わないことですれ違った。
言わなきゃ伝わらない。
言い過ぎても、すれ違う。
連れ添うために最低限必要なこと。
僕らに足りなかったこと。
やり直せないのは、お互いが一番わかっていた。
それでも、離れまいとした。
寂しさが、判断を迷わせた。
久々にご飯いかない?
久々にご飯行かない?
久々にご飯行かない?
言えない台詞を、空に委ねる。
今はもう、消えてしまった。
流れ星。