追憶の雨の中

アラサー。創作をしています。不定期更新です

DRIVE-IN THEATERでくちづけを

君を迎えに行くよ。
そんな台詞が僕の頭の中で、不意に鳴る。
僕はいつだってこの世界から飛び出す準備をしていて、実際に出られるのを待っている。
世の中では圧倒的多数で男が女を迎えに行き、おしゃれなお店に連れて行く。
甘い酒に付き合い、後でラーメンでも食べたくなるくらい少ないご飯に舌鼓を打つ。
酔っちゃったと肩に頭をのせられ、お会計は男が払う。
これが世の中の圧倒的多数。
割り勘だったり、女が払ったり、そんなこともあると思うけれど。
酒に弱い僕は、酔っちゃったと言いたいし、仕方がないなと支払いを任せたい。
気がつけば服を脱がされ、暗転し朝を迎えたい。
何時間でも膝枕されたいし、できれば養われたい。
何より働きたくない。
僕は童話のキリギリス。
楽しいことだけしていたい。
現実から逃げたい。
家事も仕事も放棄したい。
僕が好きでたまらなくて、僕がいるだけで良くて、お金をくれる人。
できれば美人で若くて可愛くて、仕事も家事もこなす人がいい。
触れない世界に興味は持てなかった。
でも、触れる世界で触ったことはない。
僕は鏡を見る。
いつそんな人が来てもいいように、扉は開けている。
身だしなみも悪くない。
免許はない。
まだ見ぬその人が、僕を導いてくれる。
だから僕には必要ないのだ。
彼女の運転する車に、様々な音が広がる。
髪をなびかせ、時折歌を口ずさむ。
僕の全てが、彼女の理想。
彼女の全てが僕の理想。
理想の二人が奏でる愛のハーモニー。
自然と距離は縮まる。
タイミングをはからずとも、その時は訪れる。
今日もそう。
DRIVE-IN THEATERでくちづけを。