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追憶の雨の中

アラサー。創作をしています。不定期更新です

Gang★

1次創作

すすけていて、先など見えない。
紫や赤などの薄暗い照明と、煙。
今日ここに来ているのは、目にくまをこしらえ生気のない痩せぎすの男と、好色さを顔面に滲み出させた脂ぎった男。
そして、口元にだけ微笑を浮かべた憎々しいほどに脂肪を蓄えた女。
ああいう追従のできる女が、モテるのだと気づいたとき、私は世の中を憂いた。

「あの子ったら、ほんっと気が利かないのよぉ」

普段、あと2段階は低い声で話す。
創りあげられた吐き気がするほど甘く、舌足らずな高音。
そして、あの子は私。
何度も聞かされてきた、気の利かなさを変える気はなかった。
どう振る舞ったとしても、私には不幸な時間しか訪れない。

寝る以外の快楽がない。
敷布団と掛け布団の間に足を差し入れるとき、僅かな温もりと冷たさを感じる。
その日の部屋の温度によって、足に伝わる温度も変わる。
その小さな快楽を、人に打ち明けたことはない。

足を滑りこませ、柔らかな枕に頭を委ねると、とりとめのない物語を始める。

夢の中の私は勇敢な男。
愛用の革ジャンに身を包み、肌は浅黒く日焼けしている。
使い慣れた白のバイクに乗り、さっそうと各地を旅する。
エンジンがかかり、足を蹴れば、どこにでも旅立てる。
荷物は最小限。座席下に積めるくらいが身軽で好きだ。

社交的で、友達も多く、仕事が休みの日は時々友人同士集まりパーティをする。
茶髪で愛用のタバコがやめられず、彼女に怒られるときもある。
クセに近いものだから、つい食後や不意の口寂しさを感じてしまうと、吸う。
仕方ないと思うのと、彼女の心配する声との板ばさみで困ってしまう。
日に1箱。値段がかさむから、高いのと安いのと2種類を吸う。

筋トレは欠かさない。ジムも週に3回は通うことにしている。
鍛錬の結果腹筋は割れ、服を脱いだときに女性がうっとりと漏らすため息が、最高に気持ちいい。

ソリマチとか、アイカワとか、そういうのに似てるとよく言われ、正直もてた記憶しかない。
遊ぶ金は潤沢にあり、今までさほど勉強せずとも、素質を活かしてきた。

いわゆる勝ち組。
多少ヤンチャしても許されるキャラだったし、本当にヤバそうな、刑事告発されそうなことは避けてきた。
勤めているところを言えば誰もが知っていて、何度か目の敵にしてきた相手もいたが、負け犬の遠吠えでしかなかった。
さらに、実家は脈々と続く由緒ある家柄らしく、育ちも悪くないと自負している。

ツイてると思うし、実際いい事しか起こらない。
人生なめてんだろ、って冗談交じりに言われたことがあるが、マジなめてる。
何でもできて、辛いことなど考えたことがない。

いや、嘘。
こんなツイてるのに、一抹の、よく分からない不安だけはある。
これが、いつまで続くのか。
満たされてるのに、何か足りない。
本当は気づいてるけど、気付きたくない。

見慣れた壁が見え、聞き慣れた音楽が流れる。
視界の隅に宝物が映る。
着古され擦り切れたTシャツの、何度も見飽きるほど見てきた文字。
私の夢。

「Gang★」