追憶の雨の中

アラサー。創作をしています。不定期更新です

まぼろし

人をひどく信用するし、全く信じない。
勘は鋭く落ち込みやすい。
占い師らしからぬ占い師の言うことを話半分に聞き流していた。
そう言われればそうな気もするし、違う気もする。
だいたい、生年月日で僕のことが手に取るようにわかるのが胡散臭い。
信じれば救われるというのなら、僕に童心を分けてほしい。
信じたいが信じるに足らない。

しんどいときに頼れる人間を、僕はあまり知らない。
僕がしんどいと感じたとき、電話帳で呼び出されるのは決まっていた。
連絡無精なため、かけられた相手は開口一番で僕の不調を案ずる。
繕わず話せることが心地よい。

言葉が海のように溢れだし、波打ち、暴れ、また落ち着きを取り戻す。
聞いているだけでいいということを、大抵の人は学ばない。
取り繕う言葉を並べてみたり、自虐で和ませようとしたり、教訓めいたことを言い自己満足に浸る。

なぜだろう、と疑問をぶつけたことがある。すると聞き手は僕に、

「みんな自分が好きで自分のものさしでしかものを考えられないからさ」

凛と澄んだ声を響かせた。
僕が求めていた答えのような気がして、いつか僕が似たような相談をされたときは、同じように返そうと決めている。

荒波を越え僕は平生を取り戻す。
また荒れる日まで僕は連絡をしない。
荒れてないときに連絡をしてこいとせがむほど、向こうも熱心ではない。
気前がいいのか、何も考えていないのか。
向こうの愚痴を僕が聞いたことはない。
自己消化するんだと言っていた。

悪意は腹を壊す。
不自然に腹が膨れ、妙な圧迫がある。
憎悪という胎児が宿り、産まれる。
醜い感情を、僕は自己消化できない。
育ちきった憎悪が産まれる痛みは辛く、出ていった後も尾を引く。
そして、またすぐに宿る。

これが僕か、お前が僕か。
産み落とされた我が子の面をついぞまともに見た記憶がない。
平生から逃れさせてくれない影。

まぼろし。