創作再開しました。不定期更新です

on and on

覚えたての、たどたどしい英会話が研究室で反響した。
研究予算が優先され手が回らないのか、あちこちが老朽化している。
ここで地震なんてめったに起きないだろうけど、この耐久性では真っ先に崩れ落ちるかもしれない。
異国というだけで、それでもきらびやかさを感じてしまう。

友人に誘われた講演に感動し、留学を決めた。
僕が興味を持っていた、とある場所についての考察だった。
学会の風潮から逸脱して独創的な論文を発表していた人だったから、名前にも聞き覚えがあった。

フィールドワークに同行したり、発掘現場に同行したりしながら、日々が過ぎていく。
研修生の立場でありながら、おかしいと思うところは主張するようにと言われていた。
研究の常で、新しいことなどすぐには出てこない。
だが、共通の目的意識がある仲間たちといるだけで、充実している。

一縷の望みの証明に、僕らは追う。
ガセかもしれないことでも、疑う前に調べる。
その日が徒労に終わっても、不思議と疲れはない。
蓄積こそが糧となる。
神は我々を試していらっしゃるのだ。
そういうふうなことを、教授も繰り返しおっしゃっている。

いつか新聞や教科書に載るような、偉業を成し遂げられるだろうか。
酒の席で思わず、つぶやいたことがある。
半分以上聞き取れなかったが、彼らの表情から失言だったと悟り、すぐに謝罪をした。

名誉のためではない。
未来のための投資だ。
神は必ず我らを見てくださっている、と言うのが、彼らの主張であった。
それを聞いてから、僕は彼らが十字を切るとき、見様見真似で実践している。
それをするなら洗礼を受けなさいとも言わず、温かく見守ってくれている。
礼拝も連れて行ってくれる。
初めてまともに聞いた讃美歌は清らかで美しかった。

僕は彼らの信仰の半分も知らない。
だが傍観ではなく、同じ位置に立つのでもなく、彼らの信仰を尊重したい。
わずかでもここにいる以上、僕はそうしなければならない気にさせられる。
彼らの機嫌を取る、というつもりはなく、自然とそう思わされた。

この街の陽射しせいもあるだろうか。
偽りを許さぬ強い日差しでありながら、陰湿さはない。
白か黒か、はいかいいえかをまず区別することの多い国らしい陽気である。
朝は寒い日すらあり、1日に四季を感じる。

彼らは繰り返し、今日もつぶやく。
蓄積を脈々と続けていくことに対して。
平易な単語で、僕もすぐ覚えられた。

on and on