今夜、君を抱いて。
振り返らずに進む、君の後ろ姿。
月日を感じさせるようで、感じさせない。
好きは、重なりあったときだけ。
僕からは絶対に言わない。言ってやらない。
僕は君を欲しがらない。
君も僕を欲しがらなくなった。
人肌のせい。
ぬくもりのせい。
後ろからぎゅっと力を込めるのも、
眠る君の横で高鳴りが収まらないのも、
ときどき、じっと見られるのに、すぐ「何?」と不機嫌そうな返答をするのも、
全部そのせい。
よく、人から何を考えているのかわからないと言われる僕が、
どうして君に振り回されないといけないのか。
なぜ急に来たのか。
本当に次も来るのか。
どうせ僕だから。
また君はいなくなる。
君は嘘つきだ。
猫のようで、犬のようで、本当にかわいい。
そして、驚くくらい残酷。
君が来たいなら来ればいい。
君が望むなら、僕は君を受け入れる。
決して君に屈するものか。
僕は僕として生きる。
愛も恋もわからない、不器用な僕として。
少しだけ振り絞った勇気は、やっぱり煙に巻かれてしまって、詳細不明。
君の気持ちなんて別に知りたくないけれど、知りたい気持ちもどこかにあるのかもしれない。
ほんの少しだけだろうけど。
ささやかな、嫌がらせ。
丁寧に洗った君の髪。
僕の好きな香りを纏った君が、帰る道中僕を思い出すくらいきつく、香りを染みこませる。
好きなんて言ってやらない。
最中ですら、まともに僕の顔を見ない君なんかに。
どうせ僕なんて、僕のことなんて考えてもないくせに。
上っ面だけの好きなんていらない。
執着なんてしてやるもんか。
なのに、僕は、僕から君をその気にさせるため、あれこれと君に手を尽くす。
抱く君が嘘の君でも、その間だけ騙されたいのかもしれないから。
今夜、君を抱いて。